静さんから教わった連絡先にぼくはさっそく手紙を書いた。
(平野勝巳さんへの手紙)
「はじめまして、平野勝巳様。私は世田谷に住む者です。何の面識もないのに、突然こんな手紙を差し上げる失礼をお許し下さい。
平野さんのお名前は、広島の黒住静さんから送って頂いた『月刊公論』の記事で知りました。一人のジャーナリストが「不思議な話」に興味をもっていく感じが実によくわかりました。私が初めて黒住さんに出会ったときの印象と似ていたので、文章以上のものが伝わってきたのかも知れません。(以下、略)」
手紙を書きながらぼくは、同じことに興味をもつ平野さんが同胞的な仲間のような気がしてきて、普段からぼくが考えていることをすべて吐き出していた。結局、とても長い手紙になってしまった。見知らぬ人にこんな長い手紙を書いたのは生まれて初めてである。そのこと自体に自分でも驚いた。
そして、しばらくして平野さんから返信が来た。
(平野勝巳さんからの返信)
「拝復、お手紙ありがとうございました。あなた様のことは黒住さんから少し聞いていましたので、別に唐突にお手紙をいただいたような印象ではありません。
今回の取材を始めてから、何か異様なほどに“霊的輪”とでも呼びたいような人のつながりが広がっていく感じで、こうしてまた、同じ霊的な指向を持った方と出会えたのだな…という感じです。
奥さまとご一緒に突然、黒住さんをお訪ねになった話はびっくりしましたが、その時も僕たちがわからない世界での導きがかなりパワフルになってきたんだなと思ったものです。(以下、略)」
平野さんからの手紙には、「月刊公論」の連載、第1回目から3回目までの記事のコピーが同封されていた。
その第1回目を読んで知ったのだが、ぼくの入口が静さんの『ある少女への手紙』だったように、平野さんもまたある一冊の本が入口になっていた。
それは、平野さんが八重洲ブックセンターでたまたま手にした一冊の本、レイモンド・A・ムーディー著『光の彼方に〜死後の世界を垣間見た人々〜』(TBSブリタニカ)だった。
(つづく) |