居酒屋


俺の名前は江藤光一。

今日は居酒屋で合コンなのだが、

情けないことに、

実は俺は、とても酒に弱い。



飲み過ぎないようにしなければ。



集まったメンバーは男女3名ずつの計6名。

男性同士、女性同士はそれぞれ同じ大学のサークルメンバーだ。

男は俺と、部長の氷室、副部長の椎名

女性は右から寺島さん、井上さん、西園寺さん。



………

やばい、ちょっと酒が回ってきた…

……





「おい!」

「ん?」

「聞いてんのか?」

「何の話?」

「これだよ… 好きな食べ物の話をしているんだよ、俺はやっぱ犬丼だな!」

「部長は犬丼大好きですからね、でも、ボクも時々凶野屋の犬丼、無性に食べたくなる時がありますよ!」

「だろ? 美味いよな、あれ!」

「ええ!」



ん?

犬丼って何だ???

俺が寝ている間に、どーゆー話になってるんだ?



「寺島さんは?」

「あたしはぁ、猫トロが好き!」

「えっ?? 猫トロ?」



ゲームのキャラクターか?



「なんだ江藤、猫トロも知らんのか? 猫肉のマグロのトロみたいな部分の事だよ!」

「そうそう、ダイエットには良くないんけどぉ、あのトロトロのカンジが良くてぇ、つい食べ過ぎちゃうのぉ!!」



???

これは何かのゲームなのか?

言葉を入れ替えて、間違った人が罰ゲームとかの?



「猫肉って言えば、私はホエイ猫が好き!! 凶竹の所のホエイ猫、この前食べたんだよ!」

「ホエイって何ですか? 井上さん」

「ホエイってゆーのは、犬乳からチーズを作る時に出る残りの液体で、今まで捨てられていた物を、猫に与えて飼育するの 栄養価が高いので、おいしくなるんだよ!」

「へー、それはエコロジーですね!」



もう、話についていけない…



「あの、あたしはその、お肉ニガテで…」

「西園寺さんはぁ、ベジタリアンなのぉ!」

「そーいや、江藤は何の肉が好きなんだ?」



「え? 俺っ?」

「お前以外に誰がいるんだよ」



「俺は… 俺はその… 牛?」



「は?」



「だから牛」



「ちょっと待て! 牛って、あの牛か? お前、牛を食うってゆーのか?」



「うっうん 牛丼とか?」



「!!」
「!!」
「!!」
「!!」
「!!」



「ウップ! 気持ち悪〜いぃ…  あたしぃ、想像しちゃたぁ………」



「お前! 牛を殺して肉を食ったとゆーのか!!!」



「ぶぶぶっ部長?? 別に俺が殺した訳ではないけど…」



「肉を食ったんなら同じ事だろ! サイテーだなお前!!!」



「うっ……ううっ………」

「あっ愛ちゃん!?」

「うううっ……シクシク………」

「愛ちゃん大丈夫?」

「西園寺さんは、動物大好きなの! ちっちゃい室内牛いっぱい飼ってて、スゴク可愛いんだよ! だから…」



「だから私… 冗談でも… そーゆーの許せない!」



「江藤ちょっと来い!」

「わっわっ!」



「おいっお前、一体どーゆーつもりだ! お前は言っていい冗談と悪い冗談の区別もつかんのか!?」

「え? えええ??」

「あーわかった! もういい もうお前は帰れ! ここの払いはいいからとっとと帰れ!!」

「いや、しかし…」

「これは部長命令だ、今すぐ帰れ!」

「スッ スミマセン御迷惑かけて、江藤光一、帰ります!」



何だかよくわからんが、とにかく女の子を傷付けてしまった事だけは確かなようだ、今度きちんと謝らないと…



「それにしても……」



牛丼食って何が悪いんだよっ! クソッ!! こうなりゃ牛丼のヤケ食いだ!



「ええと、特盛特盛っと………」



「………!」



「え? 何っ??」



「犬丼特盛630円 猫生姜焼き定食500円って………」



「うっうわあああああ!!」





「おいっ!」



「ん?」

「お前、何酔っぱらって寝てんだよ!」

「あれ? 部長?? ここ居酒屋?…」

「何寝ぼけてるんだ? ひとくちステーキ牛食わないなら、俺全部食っちゃうよ?」



「……… あっ… 俺は… 遠慮しときます」








守銭奴」へもどる 目次」へ 閉じる 線路に住む男」へすすむ

霊的故郷