スピリチュアル・カウンセラー 天枝の日誌 (14) 「読書会 1巻-第3章 なぜ苦しみがあるのか 後半」
翌週、後半の読書会が行われた。
天枝 「お祈りいたします。
天にいらっしゃいます大霊様。
本日も霊的真理を真剣に学びたいという真摯な思いを持って、
皆が集ってまいりました。
私たちが地上に生まれて来た目的は、すでに何度も学んでおり
ますが、苦しみに関しましては、知識としては理解しておりま
しても、いざ苦しい状況に遭遇しますと、真理を忘れてしまい、
苦しみが前面に出てしまうのが人間の悲しい業でございます。
もし苦しみや悲しみに埋没し、真理を忘れるようなことがありま
したら、どうか、思い出すきっかけの一片をお与えください。
私たちは、本来のあるべき人間らしい生き方、魂をより成長させる
生き方をめざし、あなた様から流れてくる愛を、自分を通して一人
でも多くの人に流していけるように、本日もまた学習してまいり
ます。
どうか、今まで以上にあなた様を感じるひと時となりますように。
では、ただいまから始めさせていただきます。」
天枝 「さて、先週に引き続きまして、苦しみのところですが、先週やった
ところは読み返してみました?」
松本 「中身が濃かったので、ここで学んだ時にはそうだと思っても、
家に帰って読み返してみたら全く違った感覚になっていたので
驚きました。
家庭とこことでは、エネルギーがずいぶん違うもんですなあ。
天枝さんがいつも言うように、一人で読むのと、数人で読むのと
では、霊的エネルギーを受け止める力が違うというのを実感しま
した。」
塩谷 「すんません、俺は読み返してないです。
今日やるところを重点的に読んだだけです。」
使枝 「この章は何度読んでも心に迫るものがあります。
苦しみの意義を知らなければ、ただ苦しいだけで終わってしまい
ますから」
美知恵「私が宗教にいた時は、良いことも多かったですが、今思い返して
みると、苦しみだらけだったように思います。」
―― 悲しみは魂に悟りを開かせる数ある体験の中でも
特に深甚なる意味をもつものです。
悲しみはそれが魂の琴線にふれた時、
いちばんよく、魂の目を覚まさせるものです。
松本 「先日、私の友人の奥さんが亡くなりまして、その時にぽつんと
『死ぬって何だろう・・・』って言ったんです。
私も母を亡くした時はずっと考えましたが、考えても考えても
答えなんて見つからなくってねえ。
もちろん、今ではわかっていますが。
答えを持っていることは、すごく安心することでもありますね。」
天枝 「家族の死は、真理を知らない人にとっては悲しみが大きい
ですよね。
でも、その悲しみが魂の目を覚まさせるというのは、皮肉な
ものです。」
―― 魂は肉体の奥深く埋もれているために、それを目覚め
させるためには、よほどの体験を必要とします。
悲しみ、無念、病気、不幸等は地上の人間にとって
教訓を学ぶための大切な手段なのです。
美知恵「苦しい時は、とても教訓を学べるほどの余裕はないですよね。
心配とか苛立ちとか、悲しみとか、あるとあらゆるネガティブな
思いが湧きだしますから。」
天枝 「苦しい時は、それだけで心が一杯になってしまって、確かに余裕
はなくなります。
でも、それは真理を知る前のこと。
これからは、苦しい時こそ霊的真理を思い出すでしょうから、
苦しみだけに捉われることは無くなると思います。
というより、そうでなくては学んだ意味が無くなりますもの。」
―― 真理は魂がそれを悟る準備の出来た時に初めて学べるのです。
霊的な受け入れ態勢が出来るまでは決して真理に目覚めることは
ありません。
こちらからいくら援助の手を差しのべても、それを受け入れる準傭
の出来ていない者は救われません。
霊的知識を理解する時機を決するのは魂の発達程度です。
魂の進化の程度が決するのです。
塩谷 「ここに“救い”という言葉が出てきますが、今までその意味が良く
分からなかったんですよ。
仏教で救われるというのは、成仏するってことかなあと思っていた
けど、成仏するってどういうことだ? とも思っていたんです。
でも、ここで初めてわかりました。
真理に目覚めることが“救われる”ということなんですね。」
天枝 「別の言い方をすると、霊性が開花するとか、魂が開花するとも言い
ます。
開花することは、すなわち成長する芽が出た、ということですから。
そして、開花することで霊的真理という魂の栄養を求め、理解も
進むんですね。」
使枝 「魂が開花していたかどうか、霊的な知識があったかどうかが、死後
の生活にとても大きく関わって来るようです。」
塩谷 「へえー、そうなんですか。」
松本 「私の周りにいる人たちは、真理を話しても全く興味を示しません。
ということは、まだ開花していない、救われていない、ということ
なんですね。」
天枝 「ええ、そういうことだと思います。」
―― 魂の偉大さは苦難を乗り切る時にこそ発揮されます。
失意も落胆も魂のこやしです。
失意のどん底にある時は、もう全てが終ったかの感じを
抱くものですが、実はそこから始まるのです。
美知恵「失意も落胆も魂の肥やしですか・・・すごいですね。」
松本 「苦難の乗り越え方で、その人の魂の偉大さがわかるなんて、
ある面恐いですね。
ピンチをチャンスにできるか、それともそこで挫けてしまうか、
ということなんでしょうか」
天枝 「ええ、そう理解していいと思います。
霊的なことがわかってくると、ピンチの中に大きく飛躍するチャン
スが隠れていることが良く分かりますから。
私も、小さいけれど、今まで何度も体験をしています。
世の中の動向を見ていても、そう思うことって多いですし。」
塩谷 「小さな体験で大きな学習、ってとこですか。
天枝さんらしいなあ。」
―― 金塊もハンマーで砕かないと、その純金の姿を拝むことが
できないように、魂という純金も、悲しみや苦しみの
試練を経ないと出てこないのです。
それ以外に方法がないのです。
天枝 「最初の堀り始めはダイナマイトを仕掛けたりして、大きく崩さ
なければなりませんよね。
でも、金塊が出始めたら、あとは丁寧に砕いて選別していくわけ
ですから、私自身は、細かく砕かれている段階かなと、
自分で勝手に思っています。
前世では、ダイナマイトで吹き飛ばされるぐらいの艱難辛苦を体験
したんじゃないかしら。」
松本 「なるほどねえ、俺もそうなのかな。
それにしても、金塊の例えは良く分かります。
叩かれて、砕かれて、更に細かく砕かれてやっと金が出てくるん
ですから。
それでも、ほんの少ししか出てこないってことですからねえ。
砕かれることがいかに貴重なことであるか、よくわかります。」
美知恵「でも、砕いた場所から何も出てこなかったとしたら、別のところ
をまた大きく砕かなければいけないわけですよね。」
使枝 「そういうことですね。
魂が確実に開花するまで、あの手この手で苦難は繰り返されるの
でしょう。」
美知恵「私は今まで過ちばかり起こしてきているから、後悔ばかり残って
います。
でも、次の箇所で、少し気持ちが楽になりました。」
―― 人間の生活に過ちはつきものです。
その過ちを改めることによって魂が成長するのです。
苦難や障害に立ち向かった者が、気楽な人生を送っている者よりも
大きく力強く成長していくということは、それこそ真の意味での
ご利益と言わねばなりません。
美知恵「すでにお話ししたように、私はエホバの証人で喜びと辛さと迷いを
同時に体験してきました。
一緒に学んでいる人たちとの交流は、学生時代でも社会に出てから
でも味わったことがないほど、充実した交流でした。
心のどこかで、何か違う、と思いつつ離れられなかったのは、この
交流があったからじゃないかと思うんです。
でも、その交流も、その宗教あってこそで、離れた今では誰も連絡
をしてきません。
その人たちにとって、離れた私は脱落者であり、神を裏切った者
であり、穢れた者だから、そういう人間とは線を引かなければ
いけないということなんです。
宗教をやめて新しく出直したものの、いまだに罪悪感が消えないん
です。
シルバーバーチに書いてある通りに、宗教でやって来たことが過ち
だったとわかりましたから、この感覚を払拭して次に進んでいく
ことが当分の間の自分にとっての成長なんだなと思えて
きました。」
天枝 「宗教が100%間違っているわけではないけれど、しょせん人間が
作った集まりですから、人間の業が渦巻いているところでも
あると思うんです。
それに、間違った教義に縛られて身動きできなくなることは怖い
ことです。
美知恵さんはそこから脱出できたのですから、本当に良かった
です。」
美知恵「天枝さんには心から感謝しています。」
天枝 「私はただきっかけになったに過ぎませんから、お礼を言われると
神様に対して申し訳ない思いになります。
すべての配慮は神と美知恵さんの後ろにいるスピリットたちの
おかげです。
私にではなく、どうぞ、神に感謝してください。」
美知恵「それでも、天枝さんがいなければ、私はいまだに宗教の中で苦しん
でいると思います。
だから・・・」
天枝 「もし私がいなければ、他の誰かがきっかけになっていたはずです。
そういう導きになっているんですよ。
私は単なる道具ですから、私の方こそ、使っていただけたことに感
謝しているんです。」
美知恵「そうですか、そういうものですか・・・」
天枝 「美知恵さんも、今の状況を乗り越えて次の段階に進み、自分が道具
として使ってもらえたと実感したら、今の私の気持ちがわかるん
じゃないかしら。
私も、最初シルバーバーチが『感謝は大霊に』といった気持が
わからなかったけれど、今では良く分かります。」
美知恵「そうですか、じゃあ、私もそういう気持ちがわかる日が来るよう
に、頑張ります。
すみません、話が逸れてしまったかしら。」
―― 何もかもがうまくいき、日なたばかりを歩み、何一つ思い患う
ことのない人生を送っていては、魂の力は発揮されません。
塩谷 「頭ではわかってるつもりなんだけど・・・
やっぱり、悩みも何もない日なたを歩きたいんだなあ。
俺は、まだまだなんですねえ・・・」
使枝 「地上に生きていること自体、誰もが「まだまだ」、ですよ。
魂の成長は永遠に続いて行くということですから、楽をして生きる
というのは、その分成長が遅れるってことだから、もったいない
ですよね。
今を楽に生きて、次にドッカーンと辛い人生にするか、それとも、
今は苦しいかもしれないけれど、もう地上に生まれ変わらずに
次の段階に進むか、じゃないかしら。」
塩谷 「なるほどねえ・・・」
―― 困難にグチをこぼしてはいけません。困難こそ魂のこやしです。
むろん困難の最中にある時はそれを有難いと思うわけには
いかないでしよう。
辛いのですから。
しかし、あとでその時を振り返った時、それがあなたの魂の目を
開かせるこのうえない肥やしであったことを知って神に感謝する
に相違ありません。
松本 「シルバーバーチの言っていることに反論する余地はないですね。
私も、今でこそ楽な生活をしていますが、会社で働いている時は、
それはもう生き地獄でしたよ。
会社は自分を認めてくれなくて、責任ばかり押し付けてくる、
部下は私をつつき、家では妻の不満が私を突き刺していました
から。
すべてが過去になった今だから、あれもこれも自分にとっては
肥やしになったなあと思えますが、もし苦しい当時にこの言葉を
聞いたら、反発心で一杯になったかもしれません。
もちろん、今は本当に有難いと思っています。」
―― 神は一瞬たりとも休むことなく働き、全存在のすみずみまで
完全に通暁しております。
神は法則として働いているのであり、晴天の日も嵐の日も神の
働きです。
美知恵「宗教とは神観がずいぶん違うのですね。
神が法則ということは、人間と同じ喜怒哀楽の感情を持って
いらっしゃらないということでしょうか。」
天枝 「人間は本能的な喜怒哀楽の方が強いですから、状況によって
気持ちがコロコロ変わりますよね。
神様にはそういう感情はないと思います。
シルバーバーチが言うには、神は完璧な摂理だそうですから」
――有限なる人間に神を裁く資格はありません。
宇宙を裁く資格もありません。
地球を裁く資格もありません。
あなた方自身さえも裁く資格はありません。
松本 「人間は本当に傲慢だから、自分の望みを叶えてくれる神は良い
神で、望みを叶えてくれないとか、悪い現象が起きれば神は
いないと言いますからね。
これこそ、神を裁いているということですよね。
人間というのは、自分勝手で傲慢な存在です。」
―― 物的尺度で見るかぎり、世の中は不公平と不正と邪道と
力の支配と真理の敗北しか見えないでしょう。
塩谷 「北朝鮮とかシリアの内戦なんかを見ると、世の中は本当に不公平
だなあと思いますよね。」
松本 「戦時中の日本もそうでした。
皆さんはお若いから戦争のことなんて知らないでしょうが、
正義と悪が逆転していた時期
だったんですからねえ。
といっても、私はまだ子供でしたから、後で親から聞いてそう
思ったんですがね。」
塩谷 「正義と悪が逆転ですか・・・
戦争では人をたくさん殺した人が英雄ですから、確かに逆転して
ますね。」
松本 「戦時中は、何でもかんでも“お国のため”でしたから。
それに、天皇陛下は神様でしたから。
今から思うと、昭和天皇はよくぞ“人間宣言”をされたと思い
ます。」
塩谷 「松本さんはすごい時代を生き抜いてきたんですね。」
―― 霊的に見て、あなたにとって何がいちばん望ましいかは、
あなた自身には分かりません。
もしかしたら、あなたにとっていちばん嫌なことが、
実は、あなたの祈りに対する最適の回答であることも
有り得るのです。
使枝 「子供の頃ですが、私は勉強が嫌いだったから、どうして学校に
行かなければいけないのか、なんてよく思っていました。
子供って、自分の将来に必要なことが分からないから、
今が楽しく遊べたらそれが幸せだと思ってしまうんですよね。
それと同じですね。」
松本 「資金繰りがうまく行かなくて、せめて宝くじでも当たれば、と
真剣に祈って買う人もいます。
でも、当たらないことが最適の回答ということですね。
少しぐらいなら当たればうれしいでしょうが、1等が当たった
ことで人生が狂ってしまった人がいるって言いますから。
自分が望むことと、自分に必要なことは必ずしも一致しないと
いうことですな。
よくわかります。」
―― 絶対に誤ることのない霊的真理が幾つかありますが、
そのうちから二つだけ紹介してみましょう。
一つは、動機が純粋であれば、どんなことをしても決して被害を
こうむることはないということ。
もう一つは、人のためという熱意に燃える者には
必ずそのチャンスが与えられるということ。
この二つです。
焦ってはいけません。
美知恵「絶対に被害には遭わないんでしょうか?」
天枝 「見た目の被害ということではなくて、魂や霊にとっての被害だと
思います。
実際には嫌な思いをしたりするかもしれませんが、動機が正しけ
れば、霊は傷つきませんから。」
塩谷 「動機が純粋なら、嫌なことを回避できる、という意味ではないと
いうことかあ」
―― 人のためという熱意に燃える者には、必ずそのチャンスが与えられる
松本 「地上だけのことで言っても、これはそうだと思います。
有名な話が、松下幸之助さんですよね。
最初に二股ソケットを売り始めた時は、小売店が儲からなければ
自分たちも儲からないと言って、雑用までしたってことですから。
そういうのが実を結んだ例だと思います。
霊的なことと同じにはできないかもしれませんが、摂理としては
似ているかなと。」
使枝 「動機が“儲けること”じゃなくて、“みんなに便利に暮らして
ほしい”、という利他愛が根底にあったんですね。
摂理通りじゃないですか。」
―― 恐怖心こそ人類最大の敵です。
恐怖心は人の心を蝕みます。
恐怖心は理性を挫き、枯渇させ、マヒさせます。
あらゆる苦難を克服させるはずの力を打ちひしぎ、寄せつけません。
心を乱し、調和を破壊し、動揺と疑念を呼びおこします。
美知恵「確かに恐怖心を抱くのは良くないと思います。」
塩谷 「エホバの証人のことですか?」
美知恵「ええ、そうです。
エホバでは、子供を叱る時にムチを使うんです。」
塩谷 「ムチというのは、馬を走らせるために使ったりする、あのムチ
ですか !?」
美知恵「ええ、そうです。
ただ、本当のムチを使うのではなくて、ビニルホースを使うよう
に勧められました。
棒とか固いもので叩くと傷跡が残ります。
でも、ビニルホースで叩くと、棒より痛いのに、痕が残らないん
です。
ビニルホースで叩かれた子は、次からはホースを見せるだけで
言うことを聞くようになるんです。
怖いですから。
叩くのは最初だけだから、子供を本当に良くしたいのなら、心を
鬼にして思い切り叩きなさい、とよく言われました。
姉妹たち、あそこでは信者同志そう呼び合っているんですけど、
先輩の姉妹たちが躾だと言って子供たちによく言っていたのが、
『家に帰ったら宿題をしなさい。すぐにしなければホースだから
ね』、みたいに、何かにつけて『ホース』を口に出して言って
いました。
今思うと、恐ろしいことをしていました。」
松本 「美知恵さんもホースを使って躾をしたんですか?」
美知恵「思いっきり叩いたことはないですが、服の上から叩いたことは
ありました。
先輩たちから、子供への愛がないから叩けないのよ、とよく言わ
れたんです。
そうは言われても、やっぱり思いっきりは叩けなかったので、
自分はなんて愛のない親なんだろうと・・・辛かったです。」
塩谷 「奴隷を扱うのと同じですね・・・
俺だったら、家を飛び出すだろうな。」
美知恵「・・・・・」
天枝 「間違った教義を正しいと信じて、それも実行して、周りに強制
までしてやらせてしまうのは本当に怖いことです。」
松本 「美知恵さんはマインドコントロールから覚めてよかったですよ。」
美知恵「まだ完全に覚めたかどうかはわかりませんが・・・」
―― はがねは火によってこそ鍛えられます。
魂が鍛えられ、内在する無限の神性に目覚めて悟りを開くのは、
苦難の中においてこそです。
苦難の時こそあなたが真に生きている貴重な証です。
夜明け前に暗黒があるように、魂が輝くには暗闇の体験が
なくてはなりません。
そんな時、大切なのはあくまでも自分の責務を忠実に、
そして最善を尽くし、自分を見守ってくれる神の力に
全幅の信頼を置くことです。
美知恵「私、宗教に入る前も苦しかったんです・・・
そういう日常から逃れたくて宗教に入ってしまいました。
もし宗教に入っていなかったら、きっと不安だらけで、それを
解消するために物欲に走っていたかもしれません。
宗教に入って良かったのかどうかわかりませんが、苦しい時期を
体験させてもらえたことを、感謝しなければいけませんね。」
―― 霊的知識を手にした者は、挫折も失敗も
神の計画の一部であることを悟らなくてはいけません。
陰と陽、作用と反作用は正反対であると同時に一体不離のもの、
いわば硬貨の表と裏のようなものです。
表裏一体なのですから、片方は欲しいがもう一方は要らない、
というわけにはいかないのです。
人間の進化のために、そうした表と裏の体験、
つまり成功と挫折の双方を体験するように
仕組まれた法則があるのです。
神性の開発を促すために仕組まれた、複雑で入り組んだ
法則の一部、いわばワンセット(一組)なのです。
使枝 「片方は欲しいがもう一方は要らない・・・これは人間心理です
よね。
人間って、自分勝手ですから、美味しいとこだけ欲しがります。
もちろん、それではいけないということなんですが。
私もまだまだこういう気持ちが抜けないから、そのたびに思い
出す言葉です。」
松本 「次の箇所ですが、分かるような、わからないような・・・
ちょっと説明してもらえますか。」
―― 私たち霊は、信念と平静の雰囲気の中において初めて
人間と接触できるのです。
恐れ、疑惑、心配、不安、こうした邪念は、
私ども霊界の者が人間に近づく唯一の道を閉ざしてしまいます。
天枝 「摂理の中に、『親和性』というものがあります。
つまり、スピリットは『類は友を呼ぶ』というか、同じ波長を
持つところに集まるということです。
善霊が接触できるのは、人間の心が善の状態の時なんです。
もし、いつもは善の心で満たされている人が、恐怖とか心配の
思いで一杯になったとしたら、その時点で善霊と波長が合わなく
なりますから、善霊は近づくことすらできなくなります。
代わりに、恐怖とか心配の思いと波長の合う霊が引きつけられて
きてしまうんです。
物欲とか金銭欲が強い時は、同じような波長をもった霊が引き
つけられてきます。
つまり、自分次第なんです。」
松本 「そういうことですか。
ということは、その人の言動を見れば、実際にオーラが見えなく
ても、その人の波長の状態がわかるということですか?」
天枝 「ええ、そういうことになります。」
使枝 「100%善人という人はいませんよね。
それに、心霊状態はいつも変わりますから。
大切なのは、自分の状態が良くないと気が付いた時点で、自分を
修正できるかどうかだと思うんです。
それを繰り返しながら成長していくんですから。」
塩谷 「なるほどねえ。」
松本 「次に書いてあることは良く分かりますが、現実的には難しいこと
ですなあ。」
―― 太陽が燦々と輝き、全てが順調で、銀行にたっぷり預金も
あるような時に神に感謝するのは容易でしょう。
しかし真の意味で神に感謝すべき時は、辺りが真っ暗闇の時
であり、その時こそ内なる力を発揮すべき絶好のチャンスです。
松本 「自分が一番苦しかった時は、会社が倒産して転職を余儀なく
された時だったんですが、
その時は、社長や部長、取引先や政府まで恨みましたよ。
これだけ一生懸命やって会社に貢献して、儲けさせてきたのに、
どうしてだ! って。
もしその時にこうしたことを知っていたら、恨まずに感謝できた
だろうかと考えたけど、苦しい最中はやっぱり感謝なんてでき
なかったように思います。」
塩谷 「俺もそうだな。
俺は親との確執から逃れたくて一人暮らししているんだけど、
今思うと、苦しかったから離れたんだなあ。
俺もあの頃にシルバーバーチを知ったとしても、感謝できたか
どうかと考えると、自信ないなあ。」
美知恵「私も苦しさが先に立って、とても感謝だなんて・・・
いま遠ざかってみて初めて、感謝・・・ですね。」
使枝 「みんなそうだと思います。
でも、それはまだ魂が開花していなかったり、開花していても
幼いからであって、成長してくれば、感謝の思いが湧いて
きますよ。」
美知恵「天枝さんはどうです?」
天枝 「私ですか?
この苦しみはどんな意味があるんだろう、ここから何を学べと
言っているんだろう、みたいな感じで、客観的に見ることが
多くなりました。
そして、これを乗り越えたらどういう状況が展開するんだろう、
どんな自分になれるんだろうっていう期待もありましたから、
苦しいけどワクワクしていた、って感じかしら。
感謝ですか?
うーん、こんな状態でも、こんな自分でもまだ地上に置いてもら
えているってことですから、やはり感謝せざるを得ません。
それより、実際には、この先どんな展開をするんだろうっていう
好奇心の方が大きかったように思います。」
塩谷 「へえー、天枝さんって、スゴイわ」
松本 「よっぽど神を信頼しているですなあ」
天枝 「真理が定着したら誰でも似たようなことを考えるんじゃない
かしら。
それとね、そういう体験をするたびに、やっぱりシルバーバーチ
の言っていることは真実だという確信が増えて行ったんです。
私にとっては、これは宝です。」
―― 霊的真理は単なる知識として記億しているというだけでは、
理解したことにはなりません。
実生活の場で真剣に体験して、初めてそれを理解するための
魂の準備が出来あがります。
塩谷 「なるほど、そういうことなんですね。
ということは、天枝さんはその次の内容も実感しているって
ことですか?」
―― いったん霊的知識に目覚めると、その時からあなたは
この宇宙を支配する神と一体となり、その美しさ、
その輝き、その気高さ、その厳しさを発揮しはじめることに
なるのです。
天枝 「これはまだ実感には至っていません。
早く実感させてもらえるようになりたいと思っています。
それと、実感している人のお話を聞いてみたいです」
美知恵「次の言葉を説明してもらえますか」
―― 魂が進化しただけ、その分だけ自由意志が与えられます。
霊的進化の階段を一段上がるごとに、その分だけ
多くの自由意志を行使することを許されます。
天枝 「自由意志についてですね。
今これを説明しだすと長くなるので、シルバーバーチが自由意志
について語っている所が出て来た時に改めて学習することに
しましょう。
この3章は内容が豊富だったので、先週と今週の2回に渡って
しまいましたね。
感想をお聞きしたいのですが。」
松本 「この章で一番心に残ったのは、苦しみに感謝・・・ですかね。
自分の嫌な過去をもう一度振り返るのはつらい部分もありまし
たが、意義がわかれば、不思議に愛しくなるものですね。
シルバーバーチを読んで、やっと感謝できるようになりました。
あの時があったからこそ、今の自分があるということですから。」
塩谷 「俺もいつかは大きな苦しい状況に出会うと思うけど、その時こそ、
今回学んだことを生かさなければいけないわけだな。
うーん、何だかテストを受けるみたいだ。
その時になって感謝できずに責任転嫁ばかりしていたら、不合格
ですかねえ。」
天枝 「責任転嫁は良くないけど、苦しみが去ってから感謝に変われば
いいんじゃないかしら。
もしその時に不合格なら、感謝に変わるまで手を変え品を変えて、
合格するまで別の苦しみが出てくると思います。
そうしたら、その時はうまく対処してくださいね。」
美知恵「今日の学習は、全部自分のためにあったような気がします。
宗教をやめても、頭の中はエホバで学んだことで雁字がらめに
なっていて、ずっと葛藤していたんです。
やめて良かったと思う半面、本当にやめて良かったんだろうか、
という不安が交差するように出て来ていましたから。
でも、改めて今日、やっぱりやめてよかった、やめるべきだった
と確信できました。
読書会に参加させてもらえて、本当に良かったです。
これこそ、本当の感謝です。」
使枝 「宗教は、本来は人の幸せを願うものだし、人間として成長を促す
ものだけれど、人が多く集まれば集まるほど逆にエゴが出て
しまって、本来の目的から逸れて行ってしまうのでしょうね。
宗教というのは、本末転倒のものが多いので、しっかりと見極め
なければいけないということだと思います。
では、お祈りしますね。
大霊様、今日も皆が集い、こうして真理に深く触れることが
できましたことを心から感謝いたします。
一人一人生きる道程は違いますが、あなた様を慕い、霊的に
向上するために、より多くの真理を理解しようと努めております。
私たちは本当に未熟で、霊的真理を理解し始めたばかりでござい
ます。
今までは苦しみは苦しみだけでしかありませんでしたが、そこに
こそ、自分にとって大切なことが隠れているということを知り
ました。
これからも、様々な苦難に遭遇すると思いますが、今までとは
違った乗り越え方をしていきたいと思います。
どうぞ、必要に応じて、苦しみも悲しみもお与えください。
私たちは必ず乗り越え、乗り越えるたびにあなた様に近づいて
まいります。
今日は、本当にありがとうございました。
読書会に参加した人たちを代表して、お祈りいたしました。」
天枝 「では、また来週集まりましょう。
今度は、“第4章 物に惑わされない生き方”ですね。」
こうして、この日の読書会が終わった。
天枝は、今日を振り返りながら、シルバーバーチの別の言葉を思い出していた。
―― あなた方の存在が醸し出す霊の芳香を漂わせることです。
それが発酵素の役割を果たします。
それが人間界のあらゆる活動分野に浸透し、吸収されていきます。
何も語らなくても、自分の存在が何かしらの影響を与えることができるのなら、こんなに嬉しいことはない。
少ない人数でも、多くの影響が与えられるように、さらに理解を深めていきたいと、決意も新たになるのだった。
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